文春オンラインより
整形をくり返した心の裡
「そのホストとは切れてないの?」
「切れてる」
「またホストに夢中になっちゃうかもしれないって思う?」
「どうなんですかね。お金なしで愛してもらえる人がいいというか。……私、すごい自分に自信がないんですよ。パパ活でお金をもらっていることで、自分に価値があるって感じることができて満足していたのかも」
この美和の気持ちは、共感できる言葉だった。私も、自分を受け入れてもらったり、認めてもらったり、誰かにあてにされることで自分の存在価値を感じたことはある。
美和の場合、その対価がお金だったというだけだ。
しかし、美和はどうして自分に価値をつけたかったのだろう。
自信がない、これが関係しているのか。
「自信がないのはなんで?」
「うーん。子どものころとか容姿でからかわれて」
美和は知的でかわいらしい顔をしているが、幼いころに容姿でからかわれたことにずっとコンプレックスを持っていたようだ。
「私、6回整形しているんですよ」 「6回!?」
美しくなったら何かが変わると思った
それは二重にした高校の合格祝いからはじまった。
次の整形は、二重をよりよくするため。その次は涙袋に注射をした。
その次は鼻を、あごを……と、少年院にくるまでつづいた。
整形のお金も、もちろんパパ活で稼いだものだ。
「美しくなったら何かが変わるかと思ったんです」
たしかに女性なら、きれいになりたいと誰もが思うことだと思う。
ダイエットしたり、メイクを覚えたり。女性なら、というかいまの時代、誰もがといっていい。
美を意識することはもっともなことであると思うし、美を意識する自分でいたいとも思う。
美和のいう、美しくなったら何かが変わる、というのはどういったことなのだろう。
「私、ひとつのことに集中するとまわりが見えなくなっちゃうので、整形が何かを変えてくれると思ったら、あとは何も考えられなかった」
「何か、って?」
「整形した先に何かを得られると思ってたんですよ。何かはわからないけど。だから早く整形したいと思ってた」
「その何かは得られたの?」
「何かって漠然としているけど、求めるものが手に入るかもしれないって思ったけど……」
整形したら何かが変わる、と思っていた美和。
しかし、その「何か」を変えることはでき なかった。
男の人がやさしくなったとか、違う扱いをされるようになったとか、目に見える変化はあった。
でもそれは自分が求めていた変化ではなかった。
何を変えたいか、自分自身もわからない。
何を変えたいかわからないが、自分の容姿を変えることができたら、何かが変わる。
容姿が変われば、求めているものが手に入ると思っていた。
美和は、そのときのことを、「目の前の自分の世界を変えたくて、必死にもがいてたのかなって」といった。